相手が自営業・無職で養育費を払わない場合の回収方法

「サラリーマンなら給料を差し押さえられるのに、相手は自営業だから無理」「無職だと言われたら請求できない」——そう思って諦めかけていませんか。実は、自営業でも無職でも、取れる手段はあります。
「相手が自営業だと、養育費は取れない」って、どこかで聞いたことがありませんか。私も一時期そう思い込んでいました。たしかに会社員より手間はかかります。でも「取れない」は間違いです。売掛金や口座を差し押さえる方法も、収入をごまかす相手に裁判所から開示させる仕組みもあります。無職の「払えない」も、そのまま受け入れる必要はありません。順番に見ていきましょうね。
まず、これだけは知ってください
- 自営業でも回収はできます。給与の代わりに、預貯金・売掛金(取引先への請求権)・事業用資産などを差し押さえられます
- 「無職だから払えない」でも支払義務は消えません。働ける能力があれば「潜在的稼働能力」で養育費が算定されるのが実務です
- 収入をごまかす相手には、裁判所の「財産開示手続」「第三者からの情報取得手続」で口座や資産を調べられます。2026年4月からはワンストップ手続きでさらに進めやすくなりました
解決までの目安
財産調査から差押えまで2〜6ヶ月が目安
自分でやる場合の費用
数千円〜数万円(自分で申し立てる場合)
自分でできる度
★★★★☆(財産調査が鍵。専門家の力も検討)
※期間・費用は一般的な目安です。相手の財産状況により変わります
ステップ1:「自営業だから取れない」が誤解である理由を知る
給与差押えは、会社が本人に代わって毎月天引きしてくれる便利な方法ですが、それは回収手段の一つにすぎません。強制執行の対象は給与だけでなく、相手名義の預貯金口座、事業の売掛金(取引先や決済代行会社への請求権)、自動車や機械などの動産、不動産まで幅広くあります。
自営業の相手の場合、実務でよく使われるのは預貯金口座の差押えです。事業をしている以上、入金用の口座は必ず存在します。また、飲食店ならカード決済代行会社への売掛金、フリーランスなら継続的な取引先への報酬請求権を差し押さえる方法もあります。
つまり問題は「差し押さえられるか」ではなく「どこに財産があるかを把握できるか」です。この財産調査こそが自営業ケースの本丸で、後のステップで説明する裁判所の制度を使えば、個人でも調べる道があります。

| 回収対象 | 会社員 | 自営業 |
|---|---|---|
| 給与 | ◎ 継続的に天引き可能 | ×(給与という概念がない) |
| 預貯金口座 | ○ | ◎ 実務で最もよく使われる |
| 売掛金・報酬請求権 | — | ○ 取引先・決済代行会社を特定できれば有効 |
| 動産・不動産 | ○ | ○ 事業用資産も対象 |
「相手が法人化している」場合は、会社の資産と個人の資産は別物なので、差押え対象は個人名義の財産(役員報酬・個人口座など)になります。ここは間違えやすいポイントです。
ステップ2:債務名義を確認する——ない場合はここから
差押えに進むには「債務名義」(強制執行認諾文言付き公正証書・調停調書・審判書など)が必要です。まだ取り決め自体がない、または口約束だけという場合は、先に養育費請求調停で取り決めを作るところから始めます。
自営業の相手との調停では、収入の認定が争点になりがちです。相手が提出する確定申告書の「所得」は、経費を差し引いた後の数字で、実際の生活水準より低く見えることがよくあります。調停では、確定申告書の数字を鵜呑みにせず、減価償却費など実際には支出していない経費を足し戻して収入を認定する運用があります。
「相手の確定申告の所得が低すぎる」と感じたら、調停委員にその旨をはっきり伝え、生活実態(住んでいる家、車、SNSでの様子など)を資料として出しましょう。2026年4月からは、裁判所が相手に収入資料の開示を命じる「情報開示命令」も使えるようになり、収入隠しがしにくくなっています。
「自営業の所得0円申告」を信じて安い金額で合意しない
確定申告で所得を極端に低く申告している自営業者は珍しくありません。その数字を前提に月1万円などで合意してしまうと、後から増額するには「事情の変更」が必要になりハードルが上がります。合意前に、生活実態と収入のギャップを必ず確認してください。
ステップ3:財産開示手続で「どこにお金があるか」を調べる
債務名義があるのに相手が払わない場合、いよいよ財産調査です。裁判所に「財産開示手続」(手数料2,000円+郵便料)を申し立てると、相手は裁判所に出頭して自分の財産を陳述する義務を負います。正当な理由なく出頭しない・嘘をつくと、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金という刑事罰の対象になります。
さらに強力なのが「第三者からの情報取得手続」です。裁判所を通じて、銀行から預貯金口座の情報(支店名・残高)、市町村や年金機構から就労先の情報を取得できます。自営業者の場合、口座情報の取得が特に有効です。どの銀行に照会するかは、生活圏の銀行・ネット銀行を複数指定するのが実務のコツです。
2026年4月施行の改正法では、財産調査から差押えまでを1回の申立てで進められる「ワンストップ手続き」が導入され、これらの手続きがぐっと使いやすくなりました。
財産調査の前に手元で集めておきたい情報
- 婚姻中に使っていた銀行口座(銀行名・支店名のメモ)
- 事業の屋号・店舗名・事業所の住所
- 主な取引先・決済方法(カード決済の有無など)
- 車や不動産など、見えている資産の情報
- SNSやウェブサイトでの事業の宣伝(収入実態の資料になる)
婚姻中の記憶が財産調査の最大のヒントになります。「あの銀行をよく使っていた」「あの会社と取引していた」——思い出せることを記録ツールにメモしておきましょう。
ステップ4:「無職だから払えない」への対処
相手が無職の場合でも、養育費の支払義務は消えません。実務では、働こうと思えば働ける健康な成人には「潜在的稼働能力」があるとして、賃金センサス(政府の賃金統計)などを基準に収入を擬制して養育費を算定する運用が定着しています。
つまり「今は無職だから0円」ではなく、「働けばこのくらい稼げるはずだから月○万円」という決め方がされるのです。病気や障害で本当に働けない場合は別ですが、その場合は相手側が診断書などで立証する必要があります。
また、無職でも財産(預貯金・実家の援助・失業保険など)があるケースは多く、少額でも取り決めをしておくことが重要です。取り決めさえあれば、相手が再就職した時点で差押えができ、収入が回復すれば増額請求もできます。
| 相手の主張 | 実務での扱い | あなたが取れる対応 |
|---|---|---|
| 無職で収入がない | 潜在的稼働能力で算定されることが多い | 調停で賃金センサス基準の算定を求める |
| 病気で働けない | 診断書等による立証が必要 | 立証を求め、程度に応じた金額で取り決め |
| 借金があって余裕がない | 借金は養育費に優先しない | 算定表どおりの金額を主張してよい |
| 事業が赤字 | 赤字でも生活実態を考慮 | 生活水準の資料を提出し実態での認定を求める |
「無職だから」と請求自体を諦めるのが一番もったいない
取り決めをしないまま時間が経つと、過去の分は原則請求できません。相手が無職の今でも、調停で取り決めだけは作っておく——これが将来の回収につながる最重要ポイントです。
ステップ5:自分で進めるか、専門家に頼むかの分かれ目
自営業・無職の相手からの回収は、財産調査の巧拙が結果を左右します。調停の申立てや財産開示手続は自分でもできますが、「どの銀行に照会をかけるか」「売掛金差押えの第三債務者をどう特定するか」といった調査戦略は、経験豊富な弁護士に分があります。
費用面では、着手金無料・成功報酬型の事務所なら、回収できたときだけ報酬を払う形なので、手元資金がなくても依頼できます。回収可能性が読みにくい自営業ケースこそ、この料金体系のメリットが大きいといえます。
まずは無料相談で「私のケースで、どの財産を狙えそうか」を聞いてみるのがおすすめです。その回答の具体性で、事務所の力量もある程度分かります。
よくある質問
Q.相手が自営業で確定申告の所得が100万円しかありません。養育費も少なくなりますか?
Q.相手の銀行口座がどこにあるか全く分かりません。それでも差押えできますか?
Q.相手が仕事を辞めて無職になったので、養育費を払わないと言われました。
Q.売掛金の差押えとはどういう仕組みですか?
Q.自営業の相手との調停で、収入資料は出してもらえるのですか?
このケースのポイント
自営業・無職の相手からの回収は「財産調査」がすべてです。裁判所の開示制度を使い倒すこと、そして無職でも取り決めだけは必ず作っておくこと。この2つを押さえれば、道は開けます。
このケースにおすすめの事務所
財産調査・強制執行の実績が豊富な事務所、着手金無料の成功報酬型がおすすめです。
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養育費のことは、なかなか人に相談しづらいもの。あなたの一言のシェアが、誰かの一歩につながるかもしれません。
※こちらでの解説は一般的な内容であり、個別のケースへの法的助言ではありません。具体的な判断に迷うときは、必ず専門家にご相談ください。
